● 鐘の埋まっている所 (生駒郡平城村押熊)
 押熊の東方、京都府山城との境の山中に、昔、寺があって、その大鐘が地中に埋まっていると云う。誰も見た者はいない。併し、沢山の瓦片はその山中にある。
  (上村拾蔵)
● 身を蚊に施した僧 (生駒郡都跡村五條)
 五條にある唐招提寺の東北の裏門を入ると、右側の一段高い林中に、大きな墓石がある。
 昔、唐招提寺を建てた僧が、その身を蚊に施し、幾万の蚊に血を吸い取らせて死んだ者の墓だと云う。(仲尾於兎麿)
● もの云う地蔵 (生駒郡都跡村六條)
 六條に「もちのき地蔵」というのがあって、ものを云う地蔵として有名だ。
昔、泥棒がこの地蔵の前でゲラゲラ笑っていた。
通りすがった「さる」(今の刑事)が、
『何がそんなに面白いのか。』
と尋ねると、
『実は私は泥棒を働いて、ここまで来ましたが、この地蔵は人の言葉が分かると、かねて聞いて居りましたので、『これ地蔵さん、私がぬすとした事を、誰にも云はずにおいてくだはれ。』というと、地蔵さんは、『わしは云わんが、おまへも云うな』と答えました。
 あまりの面白さに、つい笑っているのです。』
と言った。無論、その男は、その場で縛られた。(小島千夫也)
● 龍宮の塔のうつし (生駒郡都跡村西ノ京)
 西ノ京・薬師寺の塔は、一種異様な形で、大屋根が三つと小屋根が三つ、五重とも見え六重とも見えるが、実は三重塔に小屋根が一つづつ付け加えられているのである。昔、この塔を造ったその夢に、薬師如来が天竺から渡って来て、塔の建立を命ぜられた。その人はそれから日々その造るべき塔の図を引いて苦心したが、うまく行かない。ある夜、また薬師如来の夢のお告げで、龍宮城内の立派な塔を見ることができ、直にその形を写し取っておいて、遂に仕上げたのがこの塔だという。
  (仲尾於兎麿)
● 西ノ京の割れがね (生駒郡都跡村西ノ京)
 西ノ京の薬師寺鐘楼には、ヒビの入った大鐘が懸かっている。国宝であるが、俗には、『西ノ京のわれがね』と呼ばれる。昔、弁慶があちらこちらへ引っ張り廻して、割って捨ておいたのを、だれかが拾って来たものだと云う。(仲尾於兎麿)
● 弁慶の足がた (生駒郡郡山町)
 郡山城三の丸の北、番所跡の石垣の一石に、大きく足形に凹んだ個所がある。
昔、弁慶が踏んだあとだと伝え、『弁慶の足がた』と今も呼ばれている。
 (小島千夫也)
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