烏(からす)みよとて殺された人
 
橿原市中曽司町(旧高市郡真菅村中曽司)
   年は十六磐余の宮で
     烏みよとて殺された
という歌がある。
 昔、年ごろ十六、七の若い番頭が、節季の掛け取りをしての帰り道、夕暮れに中曽司の磐余の宮を通りかかった。ひとりの悪人が、ここに待ち受けてあの高い松のところに、白い烏が止まっているとあざむき、見上げたところをつき上げて咽喉をしめ、金袋を引きさらって、曽我川堤を南へと逃げた。そして、曽我のあるうどん屋に入り、飯を注文した。主人が見ると、客は飯一人分くれといったのに、人数は確かに二人である。
 悪人の背後には、くだんの番頭が、血まみれになって、くらいついていたのだ。
 主人は二人分ですかと聞きただす。盗人は驚いてただちに逃げ失せた。これがこの歌の始まりであるという。(崎山卯左衛門・東蕗村)

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