● 長性寺の仏さま

 大字葛に長性寺がある。融通念仏宗で、無住、塩井の明安寺の住職が兼務している。ここの本尊の阿弥陀如来木座像は、もと大字伊賀見の開善寺にあった。むかし、盗賊が盗んできて、大字葛のヒキオトシという所まで来ると、仏像を背負っていたヒモがほどけて、仏像を引き落した。そこから他所へ持ち行かんとしたが、どうしても動かせなかい。盗人は、そこに捨てて去った。葛の村人が拾ってまつったのが今の長性寺の本尊である。高さ九五・五cmである。開善寺は焼失して今はない。

● 金強《きんつわ》神社の稲荷
 大字葛にある金強神社は正一位稲荷大明神をまつる。開運出世、財運充満、福徳の神である。明治の初め、萩村明七氏が屋根葺の萱を字オンジへ刈りに行った。すると白い蛇が出ているのを見た。妙なことと思い、稲荷下げをする人に拝んで見てもらうと、ダケ神社へ稲荷さまをまつれということだとわかった。十五人の同志によって斎いこめることになり、京都の伏見稲荷へ参り、勧請してまつる。今もこの十五人は稲荷講を結んでいる。
 一説には、穐西氏の先祖が白狐の夢をみた。この時、村の人も同じ夢をみたので、金強神社をつくったのが起こりだともいう。
● ヨキ峠
 大字葛にあり、小西氏の先祖が、冬山へ仕事にヨキをもってマキをとりに行った。それきり帰らなかった。村の人が心配して山をさがしたが居なかった。しばらくすると、ヨキ峠という所にヨキが置いてあった。しかし誰も居なかった。しばらくすると松の木の上で、その人が座っていた。「何をしているか」と問うと、「天狗さんがよい所へつれて行ってやろうといったので、つれてもらった。」という。天狗さんによいところへ行ってもらってよかったという。それからこの山へゆくのには、ナスビノミソズケは天狗さんの好物であるから天狗さんにつれて行かれるという。
● ひょうたん石
 大字葛にあり、小山のせまい所に道が通っており、その真中に「ひょうたん石がある。この石に神が宿っているといってさわらない。この石を避けて通り、また、たたりがあるといって誰も割らなかった。ところが農道をつけるに際して割ってしまった。その人たちが病んだ。そこでその傍らに道祖神をまつった。
● 三光石
 大字葛にあり、生まれ石で石質は礫岩(レキガン)である。傍らに「センソ伝来三光石」と刻んだ標石が立っている。俗にこれを子授け石、子持ち石といっている。
● ひざの横継
 葛の人、ダケという所へ薪をつくりに行った。すると天狗が老人に化けて近よって来て「割木を作っているから、すぐ来てくれないか」という。何所へか天狗に連れられて行った。その晩は帰って来なかった。そして行方は判らなかった。二三日して木津川のほとり藪の下で死んでいた。それはバツチ(股引)のヒザツギ(膝継)が横にあててあったので証拠となった。曽爾村地方では「バツチの膝つぎは横にあてるな、人柱に立たされる」という。

● 愛宕神社の白狐
 大字葛の愛宕神社はカグツチ(軻遇突智)の神をまつり、火の神さまだという。神馬を御神体にしてある。境内に白狐がいた。祈祷師や巫女にさがる。白狐の言うのには「四十年、五十年後に空飛ぶ飛行機や自動車が走る時世がやって来る。」と予言した。この神社も大正三年十一月三十日皇太神社へ合祀された。

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