● 実相寺の天狗 大和郡山市矢田町(旧生駒郡郡山町矢田)
 実相寺の本堂の一隅に等身大の天狗が祭ってある。昔、この寺の和尚さんの母の、ある夜の夢に天狗があらわれ、
 「われは堺の太田神社の木の上にいる天狗である。そこにいるのはいやでたまらない。早く郡山にきたいから迎いにきてくれ。」
といい終わると、夢がさめた。和尚と母のふたりが堺の太田神社にいって連れてかえったのが、この天狗であるという。(上野恭雲)

● 稲塚 大和郡山市矢田町(旧生駒郡矢田村矢田)
 天武天皇がいくさにやぶれ、矢田の地にお逃げになった時、ちょうど、農夫が稲をかけていた。天皇は自分の身の上に稲を積ませ、身をおかくしになった。まもなく敵が追いかけてきて、あちらこちら探したが見あたらなかったという。そこを稲塚と呼ばれている。この塚には鳥が住み、これを見る者は百日ならずして、必ず死ぬるという。(京谷康信)

● 石に人足 大和郡山市東明寺町(旧生駒郡矢田村東明寺)
 矢田の東明寺のちょうさかけの下に石がある。この石に人の足跡があるといわれている。昔、ある気高い人がこの地に来た時、上から大きな石がころがり、馬をおしつぶしてしまった。その人は大いに悲しみ、ここにくるごとに、その石の上にのぼり、馬の埋まったところを見たので、石にその人の足あとがついたという。
(京谷康信)

● 大蛇退治 大和郡山市山田町(旧生駒郡矢田村矢田)
 素盞嗚尊<すさのおのみこと>が出雲の簸<ひ>の川で大蛇<おろち>退治をされたといわれるが、この山田町にもこれと同じ話が伝わっている。杵築神社には素盞嗚尊をまつっている。素盞嗚尊が大蛇退治の時に腰をかけたという影向石<ようごういし>や、八岐<やまた>の大蛇を埋んだという八つ塚がある。
 (京谷康信)
● 山田のでんでらこ 大和郡山市山田町(旧生駒郡矢田村矢田)
 十月十三日に山田にある杵築神社の境内で、大きな櫓を組み、これに火をつけてもやす。これをでんでらこと呼んでいる。
 これは昔、素盞嗚尊が大蛇に食われようとする稲田姫をたすける時、でんでらこといった。それから、この行事が起こったという。(京谷康信)
● 業平<なりひら>姿見の井 大和郡山市新庄町(旧生駒郡治道村新庄)
 天理市櫟本の在原寺のあった在原から、河内の高安の女のもとへ通ったという河内通いの業平道は、今も細々とたどることができる。在原から1キロほど西へ行ったところで、昔の橘街道と交叉する郡山市新庄の鉾立<ほこたて>というところの東南隅に、業平姿見の井というのがある。
「業平朝臣すがた見の井」と彫った石の井筒があったが、失われている。
今はそこに蕪村の、

    虫啼くや河内通ひの小提灯

の句碑が建っている。(仲川明)
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