● 五重橋 奈良市東九条町(旧添上郡辰市村東九条)
 東九条から大安寺へ行く道で、岩井川を越すところに五重橋がある。
辰市八景の一つで、ここから奈良の大寺、興福寺、薬師寺、大安寺、元興寺、東大寺、西大寺の五重の塔が見えたので、五重橋といったという。
 (辰市村史による)


● 天狗の面と天狗杉 奈良市大安寺(旧添上郡大安寺村大安寺)
 大安寺の八幡宮では、毎年十月十五日に古風なお渡りの式が行われる。
この時用いられる天狗の面は、天照大神が天の岩戸におかくれになった時、猿田彦命がこの面をかぶって踊ったという。この面は、この八幡宮の境内にある杉の木にかけてあったので、その杉の木を天狗杉というようになった。
 (中尾新緑)


● 大師塚 奈良市大安寺町(旧添上郡大安寺村大安寺)
 八幡宮の一の鳥居の北側に小さい塚があった。この塚は弘法大師が、永年、行をなされたところであるという。明治の初めのころ、この塚をこぼって田にした時、白い蛇が多数出てきた。これは大師の行に清められて白くなったのである、といわれている。(中尾新緑)


● 古女郎大明神 奈良市大安寺町(旧添上郡大安寺村大安寺)
 現在、国道二十四号線となっているが、国鉄奈良駅(現:JR奈良駅)から南へ約一五〇メートルの地に、昭和の初め頃までは、「あいがいし」という竹藪があった。その藪の中ほどに橋があって、そこに狐が住んでいたという。
 ある夜、ひとりの武士が、ここを通りかかると、目の前に坊さんがひょっこりとあらわれ、武士に突きあたった。武士は怒って、
「無礼者、手討ちにするぞ。」と叫ぶと、
「何ぬかす。坊主にするぞ。」
と答えた。そして坊さんは、スーッとその姿を消してしまった。「おや」と思っている間もなく、こんどは四人の坊さんがあらわれ、武士の頭をそって、坊主にしてしまった。これはこの橋の下に住む狐のいたずらであった。
 昭和七年、国道工事の際、この竹藪がこわされたので、狐は怒って線路を幾筋にも見せて、工事人夫を負傷させた。人々は、この狐のたたりを怖れて社をつくり、古女郎<こじょろ>大明神として祭っている。
 (中尾新緑)


● こもでちまきをつくらない所 奈良市大安寺町(旧添上郡大安寺村大安寺)
 神功皇后が三韓征伐におこしの時、皇子がお生まれになった。人々はほとんど御供申し上げたので、皇子様をお育てするものがなくなった。ところが、鳩がコモ川のところに飛んできて、こもの上で皇子を育てた。
 ある時、鳩が気をゆるしているまに、皇子はこもで眼をおつきになり、とうとう失明された。それで、今でも大安寺では、こもでちまきをつつむことをしないという。(中尾新緑)
 注 こも―ちまきをつつむ草の葉


● 伝宝寺池 奈良市大安寺町(旧添上郡大安寺村大安寺)
 大安寺の東に伝宝寺池がある。ここに伝宝寺(禅宝寺)というのがあって、そこに薬師如来をまつっていた。ところが、その寺が焼けてしまったので、仏像や大事なものは箱に入れて埋んでしまった。そうして、寺跡に記念の池を掘った。それが伝宝寺池であるという。
 (中尾新緑)


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